副腎皮質機能亢進症は、左右の腎臓のそばにある副腎の外側の層(副腎皮質)で造られているコルチゾールと呼ばれるホルモンが過剰に分泌されてしまう病気です。
クッシング症候群と呼ばれることもあります。犬に多く見られる病気です。
コルチゾールは、糖・脂質・タンパク質を代謝する働きや、炎症・免疫・アレルギー等を抑える免疫系の働きなどを担う、生命維持に欠かせないホルモンです。ストレスによって分泌されることもあるため、ストレスホルモンとも呼ばれます。
コルチゾールは人工合成のステロイド剤と同じ成分を持つため、この病気にかかると、ステロイド剤を服用しているのと同じような症状を呈するようになります。
- 主な症状
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- 多飲多尿(水をたくさん飲み、薄いオシッコを大量にする)
- お腹が膨らんでいるように見える
- 筋肉量が減ってきたように見える
- 脱毛や皮膚の黒ずみが見られる
- 皮膚が薄くなり血管が透けて見える
- 皮膚が皺っぽくなったりゴワゴワ(石灰化)してくる
- 皮膚炎などの感染症をくりかえす
- 原因
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脳下垂体あるいは副腎の腫瘍化によるコルチゾールの過剰分泌

正常なホルモンの仕組み

クッシング症候群
診断
症状、血液検査、超音波検査、尿検査の結果などを総合的に判断して診断を行います。一般的に血液検査では、ホルモン検査である、
ACTH刺激試験を行います。副腎を刺激する合成ACTH 製剤を注射して、1時間後のコルチゾール値を測定する特殊な検査です。この検査で明らかにならない場合、追加として低用量デキサメタゾン抑制試験、尿中コルチゾール/ クレアチニン比、内因性ACTHの測定、さらにCTやMRIなどの画像検査を行うこともあります。
治療
脳下垂体性の場合は、一般的に内科的治療が選択されます。治療には
トリロスタンという内服薬を服用します。トリロスタンは副腎でコルチゾールが生成されるのを抑制し、副腎皮質機能亢進症の症状を抑えます。しかし、トリロスタンの服用にはリスク(嘔吐や下痢、急にぐったりして動かなくなる、震えるなど)があります。こういったことが極力起こらないように、最初は少ない用量で投薬を開始します。その後は、2~4週間ごとにACTH刺激試験を行い、その結果を元に、用量を少しずつ調節していきます。
クッシング症候群が副腎腫瘍による場合、第一選択は副腎の摘出になります。その他、脳下垂体腫瘍の腫大が顕著な場合は放射線治療などが適応となってきます。
予後
トリロスタンの投薬は、生涯に渡って行う必要があります。
治療を開始した場合であっても、クッシング症候群には様々な合併症があるため、これらを完全に制御できることが難しい場合もあります。代表的な合併症として、神経症状や血栓による血管梗塞、腫瘍の転移による突然死などが挙げられますが、病態には個体差があり、なかなか予測が難しいと考えられます。