横隔膜ヘルニアとは、腹腔内の臓器が横隔膜を超えて、胸腔内に入り込んでしまう疾患です。
臓器が肺を圧迫することで、うまく空気を取り込めなくなり、呼吸困難になる事があります。また、消化管が胸腔内に入り込んだ場合は便秘や下痢などの消化器症状が起きる事もあります。
横隔膜ヘルニアは、
先天性と
後天性に分けられます。

正常

横隔膜ヘルニア
- 主な症状
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- 呼吸が浅い、呼吸が速い、呼吸困難
- 疲れやすい
- 便秘・下痢
- 嘔吐
※無症状で後から症状が出てくるケース(外傷性の場合)や健康診断で発見されるケース(先天性の場合)もあります
- 原因
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- 先天性:胎生期の形成不全によるもの
- 後天性:交通事故、落下、ケンカ等の外傷によるもの
- 先天性の
好発犬種
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アメリカンコッカースパニエル、チワワ、トイプードル、ペキニーズ、ボストンテリア、ミニチュアダックスフンド、
ヨークシャーテリアなど
診断
胸部X線検査と超音波検査により、胸水の貯留や胸部の消化管ガスの存在、横隔膜ラインの有無、心陰影異常などを確認します。
治療
胸腔内に逸脱してしまった腹腔臓器を本来の位置に戻し、横隔膜の損傷部分を整復する外科治療を行います。周術期の麻酔リスクが比較的高い手術であるため、術後のモニタリングも重要となります。
予後
術後の合併症は約50パーセントの確率で起きるとされており、気胸、臓器不全、肺水腫、ショック、消化管閉塞、突然の心停止などがあげられます。
手術前 横隔膜ヘルニア
横隔膜に開いた穴から、肝臓、胃、腸が胸腔内に入り込んでしまい、肺(黒く見える部分)が背側に追いやられています。肺が満足に膨らまず、呼吸が苦しくなっている状態です。
手術後 気胸、食道拡張
胸腔内に逸脱していた臓器が正しい位置に戻っています。
実際の症例紹介も併せてご覧ください
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